ほーりーが行く!暖簾越し お江戸の風景

ほーりーが行く!暖簾越し お江戸の風景

歴史に詳しいお江戸ルとして活躍中のほーりーこと、堀口茉純さんが、江戸から続く風月堂の時代にタイムスリップ。当時世の中ではどのようなことが起きていたのでしょうか?

第二三回 氷献上と氷餅のお話

第二三回 氷献上と氷餅のお話

 旧暦の6月は水無月とも言うように梅雨が明けて雨が少なくなる季節。暑さもいよいよ本番となります。このため6月1日(新暦の7月上旬ごろ)の江戸城ではある年中行事が行われていました。
それは氷献上。加賀藩前田家が国元の金沢で冬の間に降った雪を氷室に貯蔵して氷状にしておき、この時期に合わせて江戸藩邸上屋敷(現在の東京大学がある場所)に運びこんだ後、江戸の将軍家に献上しました。氷は時間が経つと溶けてしまうため、飛脚が昼夜走りつづけて加賀から江戸までのおよそ500キロをわずか4日間ほどで運んだ(通常だと10日間の行程)というから驚きです。
この様子は〝六つの花 五つの花の御献上〟と川柳によまれました。六つの花というのは雪の結晶の形から氷のこと、五つの花というのは梅鉢の家紋を用いている前田家のことです。シャレていますね!
江戸城に献上された氷は将軍によって側近たちに下賜されたり、大奥にも持ちこまれ御台所以下女中一同に配られたりしました。氷といっても雪を固めたものなので土やゴミが混ざっていたのでかき氷のように食べるというわけにはいかず、触って涼んだり、果物を冷やしたりすることに使っていました。それでも冷蔵庫のない当時は、暑い季節に氷の冷気を感じること自体が最高の贅沢だったようです。
庶民がこの時期に氷にありつくのは夢のまた夢なので、代わりに氷餅というお菓子を食べる習慣がありました。氷餅は餅を水に浸して凍らせた後に乾燥させて作る保存食。いわばフリーズドライのお餅です。冬に作っておけば夏頃まで食べられたので正月の餅を利用して自宅で作りおきしたり、風月堂の様な御菓子屋で購入したりしました。冷たいわけではないですが、なんとか気分だけでも涼しくなろうという事だったんでしょう。微笑ましいですね。

本文、イラスト: 堀口茉純 東京都足立区生まれ。幼少期より時代劇に親しむ。小学4年生の時、司馬遼太郎の本に出会い、沖田総司に初恋。中・高生の頃の成績は歴史のみ5。明治大学在学中に文学座付属演劇研究所で演技の勉強を始め、卒業後、女優として舞台やテレビドラマに多数出演。
一方2008年に江戸文化歴史検定一級を最年少で取得すると、「江戸に詳しすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル)」として注目を集め、執筆、イベント、公演活動にも精力的に取り組む。また、facebook内最大のお江戸コミュニティ『お江戸、いいね!』でナビゲ―ターを務め、江戸⇔東京の魅力を発信し続けている。

【著 書】
『TOKUGAWA15~徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本~』(草思社)
『UKIYOE17~江戸っ子を熱狂させたスター絵師たち~』(中経出版)
『EDO100;フカヨミ!広重『名所江戸百景』(小学館)
『SHINSENGUMI GRAFFITI 1834-1686~幕末を駆け抜けた近藤勇と仲間たち~』
『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』PHP新書

【レギュラー】
NHKラジオ第一『DJ日本史』MC
TOKYO MX 『お江戸に恋して』
連載・・・サライ.jp (小学館) など多数